「でも、そうでしょう? 今まで、ずっとそんな感じだったじゃないの」
「確かに、このくらいなら慣れっこなはずなんですけど……私、そんなに魅力ないですかね」
食べかけのサンドウィッチをお皿に戻し、溜息を吐いた。
香織さんの言う通り、神木部長が私のアタックに振り向いてくれないのは今までもずっとそうだった。今までも、今も、全く変わらないのだから落ち込むのは今更だ。
だが、部長を好きになって、アタックを一年以上し続けている。そろそろ、振り向いてくれてもいい頃だと思う。ここまできて振り向いてくれないのなら、もう、きっとお先は真っ暗だ。
「私は好きよ? 若いのに根気があるし、明るくて、笑顔を絶やさないから沙耶ちゃんがいると職場の雰囲気も良いし。部長がどう見てるかは知らないけど、部長の見る目がないってだけの話じゃない」
「香織さん」
さらり、と嬉しい台詞を放つ香織さん。平然とブラックのコーヒーを喉に流し込んでいる彼女に、私は熱い眼差しを向けた。
「まあ、でも。あまり無責任なことは言えないけど、部長も満更でもないと思うのよね。私は」
「ええ、どうしてそう思うんですか」
「理由なんて無いけど……強いていうなら、大人の勘かな」
私の問いに、そう答えて笑う香織さん。香織さん言うことはいつも的を得ているし信用できる。が、その〝大人の勘〟というものだけは、安易に信用できない私がいた。

