仕事を終えた私は香織さんに連れられ、香織さんが旦那さんと一緒に住んでいるマンションへとやって来た。

「香織さん、ここに住んでたんですね」

 いつも、通勤の時に大きくて綺麗だなと思いながら眺めていたマンション。私は今、そのマンションのエレベーターを降りると、香織さんの住む部屋に向かっている。

 外装に伴う綺麗な内装をまじまじと観察しながら、私は香織さんの後ろを付いて歩いた。

「ここ」

「あ、はい!」

 香織さんが〝805〟と書かれた扉の前で立ち止まる。カードキーで部屋の鍵を開けた香織さんはドアノブを引くと私を見た。

「はい。入って」

「は、はい。お邪魔します」

 私は、綺麗な部屋に足を踏み入れる事と、この奥には旦那さんがいるという事の緊張とでガチガチになりながら歩き始めた。

「そんなに緊張しなくても大丈夫。うちの旦那、よく話す人だから。それに、沙耶ちゃんのことは金曜に一度会ってるから知ってるしね」

 まあ、沙耶ちゃんは寝てたけど。と付け足して笑った香織さんが廊下の突き当たりにあるリビングの扉を引いた。

 開かれた扉から、白を基調にした素敵なリビングが見える。香織さんに続いてそこに足を踏み入れると、そこにはオールバックの黒髪で、切れ長の綺麗な瞳と整った顔立ちが印象的な旦那さんがいた。