忙しそうに看護師が走りまわっていた。

夜勤の医者が急いで病室に向かう。

PM11:00

とある病院のとある病室だけが騒がしくなる。

それが分かれ道の途中、私が見た最後の光景。

なぜかわからないが、穏やかな気持ちで見ていた。

「どうしたの?お父さん。」

「あぁ…ちょっとな。」

たぶん…いやきっとこの子は、何年も前に妻と私の間に生まれるはずだった………。

「あなた。一緒に行きますか?」

妻の声でさらに穏やかな気持ちになった。

「そうだな。そろそろ行こうか。」

娘と手をしっかりとつなぎ、私はゆっくりと歩き始めた。








医者と看護師の見守る病室で、一人の男が息をひきとった…。

彼は癌だったが、その最期はとても穏やかな顔をしていたらしい。








―――ピーーーーーーッ………―――――








-end-