(誰だったんだろう…。何なの?急に女の子の手を握るとか!頭おかしいんじゃない?!)

私は早足で廊下を歩いた。すると、急に教室のドアから飛び出してきた小さめな男子生徒とぶつかった。

「おい!何俺にぶつかってんの?」

キレ気味で睨まれた。

「上等じゃん。おい、女こっちに来い。」

私は手を掴まれると教室の中に引っ張られた。教室のドアの近くには沢山の男子生徒がいた。

「痛っ!」

すると強引に身体を引き寄せられた。

「こいつが俺の恋人。可愛いだろ。」

その小さい男子生徒は私のことを『恋人』と呼んだ。周りの男子は口々に「お前に恋人なんていたんだー。」などと言った。

(な、何言ってんのこいつ!あなたとは初対面だし、ぶつかっただけで、思いっきりボロクソ言ってきたじゃないの!何この馬鹿!)

私は思わず足を踏み付けた。

「あのー。少し済みません…。公衆の面前でこんなことを…。恥ずかしくてものも言えませんわ…。」

私は丁寧に断ると男子生徒の耳を引っ張って教室から離れた所の壁に叩き付けた。

「何言ってるの?いつ貴方の彼女に私はなったの?大体貴方とは初対面だし、ぶつかっただけでそんなことされる筋合い無いわ!そんなことに私を利用しないで欲しいわ!」

私は何十年かに一度の大噴火を起こした。顔が真っ赤になり手をぎゅっと握った。

しかし彼は何も言わなかった。しばらく沈黙が続いた。

「あぁ、それは悪かったですねー…。」

彼はふてくされながらいった。
次の瞬間、私の腕を掴むと逆に壁に叩きつけられた。

「なんて言うとでも思った?俺はそんな軽率じゃない。」

彼は壁に手を付き、私の顔を覗き込んだ。そして耳の近くで呟いた。

「俺の名前は石沢 隼太(いしざわ しゅんた)だ。改めて付き合ってくれ。」

そして強引に唇を重ねた。私にとっては初だった。ふわっと甘かった。まるでシフォンケーキのような柔らかい唇で私は驚いて彼、改め、隼太を殴った。

「い、いきなり何するのよっ!!!」

私は口元を何回も擦った。しかしまだ熱が残っていた。