「貴女が司馬 小春(しば うらら)さん？」

昼食を済ませた私は屋上で寝転がって居ると、ふわふわな髪質の男子生徒が現れた。

「え、そうですけど…貴方は誰？」

私は上半身を起こすと男子生徒を怪しく覗き込んだ。吸い込まれそうな硝子みたく綺麗な瞳が私を見つめた。

「僕？僕は泰丘 朔叶(やすおか さくと)。貴女をずっと探してました。」

彼はニコッと微笑むと私の手を取った。
その手は大きくてコンプレックスである私の小さな手をすっぽり包んだ。
そして、その手はとても暖かかった。

(な！何よ…！初対面で手を握るとは…！)

「貴女は僕の初恋の人です。覚えてますか？あの公園で二人で交わした約束…。」

男子生徒改め、朔叶は私を見つめた。何かを訴えるような、少し尖った目線を私に向けてくる。

「ご、ごめんなさい。そんなこと無かったですよ？人違いです。」

私は彼の手を払おうとした。しかし、きゅっ、と力がこもって私の手を握った。

(いや…！朔叶って誰よ！知らないわ！)


私はすっと立つと腕に力を込め、上下させた。そして手が抜けると走ってその場を去った。

「そうですよね…。僕は貴女を待たせ過ぎました…。もっと早く転校するべきでした…」