陽音にエスコートされながら、
地下駐車場からエレベーターへと乗り込む。


自分と娘を気遣いながら歩く、
陽音の 紳士的なエスコート…

最上階のボタンを押す、陽音の指…


恵倫子は、
陽音の優しさに触れながら、

陽音と 秘密を共有している感覚に
胸が高鳴った。



恵倫子の鼓動とは正反対に
エレベーターは、振動もなく、静寂に
最上階へとカウントする。



程なくして、
エレベーターは最上階へと到着し、
扉は、開かれた。



目の前に広がった、
豪華絢爛なエントランス装飾。



恵倫子は、一瞬、思わず言葉を失った。


見蕩れながら エレベーターを降りる。


「凄い…。
香大さん…、ここが、オフィスですか…」

「はい。オフィス兼自宅です」

「はぁ……。凄いですねぇ…」



恵倫子は、
初めての興奮を目に焼き付けるように
見渡していた。


そして、ふと気づく。


“え……、兼 自宅?…、

…私…、香大さんの自宅に来ちゃったの?

……どうしよう…”



恵倫子の心境をよそに、
陽音は、淡々と玄関扉を開けて、

「どうぞ」

と、容易に促す。



「…いぃんですか…」

「?、さぁどうぞ」

「はい…、お邪魔します…」



不安も入り交じりながらも、
恵倫子の胸は、大きく 高まった。



三人を包み込むように 静かに 扉が閉まる。









エントランスから伸びる観葉植物の葉が、

空からの あたたかい一滴を

人知れず

そっと受け止めた ーー