「う…わっ、」


頭上から明らかに引いたような声。

当たり前の反応だ。

だってTシャツに私の唇の跡がくっきり付いているんだから。


「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい!」


焦りながら全力で頭を下げて鞄の中をゴソゴソと探った。

ティッシュ、じゃ落ちないか。

ハンカチは…ダメだよね。


探しても探しても鞄の中にはロクなものが入っていない。

どうしよう……



「あ、こっち!」

「え!?ちょ!」


そう言えば少し離れた所に手洗い場があるのを思い出して、

男の腕を掴んでグイグイと引っ張った。


そこは人気のない静かな場所で。

私はハンカチを少し濡らしてTシャツに押し当てるように擦った。

これで何とか落ちてくれないかな…