ドンッ


「わっ!」


年が明けてすぐのある日の夜。

友達と初詣の帰りに街中を歩いていると、
顔面に衝撃が走った。


「ちょ、大丈夫?」

「あ、うん。大丈夫」


ふらついた私を友達のさやかが支えてくれて、
何とか尻餅をつかずに済んだ。


「いってー…」


すると頭上から聞こえたのは
低い声。


「あ、ごめんなさい」


咄嗟に顔を上げてそう謝ると、
眉間にしわを寄せて私を見下ろす男が居た。


ひっ…!

思わずそんな心の声が漏れそうになった。


「……」

「すみません。…あ、」


男の顔から目を逸らすように
目線を下にずらすと、

白のTシャツに淡いピンク色の唇の形が
くっきりと残っていた。


やば、どうしよう!

あれはきっと私の口だ……


あわわわ、と

心の中で慌てているのが顔に出ていたのか
男が私の視線を追いかけるように下を向いた。