つぎのお花見場所は秋川に決めていた。
そこは、両サイドに桜が咲き真ん中に川が流れている。

川の水面に桜の花びらが浮いてとても綺麗なところ。電車で1時間かけて秋川に行く。

「やっと着いたね、海斗」
「そうだな」
桜が満開になると人も増える。


秋川は、桜だけでなくビールや団子等の飲食店もあり一層賑やかになる。
「また、海斗ー!ここも綺麗」
「ああ」

「なに海斗、さっきからああとかそうだなばっかり」
「わりいかよ、疲れたんだよ」
とそこへ。

「桜ビールはいかがですかー!美味しいですよー!」
と威勢の良い女性店員の声が聞こえ聞こえてきた。
「っ!桜ビールねえ、美味いの?」
海斗は店員さんに聞く。

「はい、ほんのりピンクでここでしか売ってない限定ビールです。試飲もできますが、お飲みになりますか?」
「はい」

海斗は根っからのビール好きで、販売してる女性が美人だと分かって少しデレデレしている。
「彼女さんもどうぞ」
「ありがとうございます」
2人で桜ビールを試飲した。

「あっ!ほのかに桜の木香りがするような」
「お前サクラに香りなんてあるかよ」
「あったらいいなって」
「ふうん、俺はお前の香りが好きだ」
「えっ?急になに言ってんの?」

飲み終わり、コップをゴミ箱に捨てる。
「どうも」
「ありがとうございました」

2人は桜ビールを買わずに、人気のない所にきた。

「愛海、今日はローズの香りがする」
愛海の長い髪を横にずらして、首すじにキスをした。
「あっ!ちょっと海斗なにやってんの。恥ずかしいからやめて」
「やめない」
そして後ろから愛海を抱きしめる。

「っ!嫌、離して!」
「なんでだよ!」
「だって、周りの人みんな見てる」
「見せつけてやろうぜ。な?」

「これじゃ、変態だよ。ただの」
「変態なんて言うなよ、俺がどれだけ愛海のこと愛してるか分かってんの?」

「じゃあ、ソフトクリーム買ってくれたら許してあげる」
すぐそこにソフトクリームを売っているお店があった。
「じゃ、なにがいいんだよ」
看板メニューを見て。

「さくらソフトクリーム」
「分かったよ」

海斗がお店に行くと。
周りをキョロキョロしている5歳くらいの男の子が愛海に近づいてくる。

男の子に気づいた愛海は。
「ねえ、僕どうしたの?お母さんは?」
「ママ、どっか行っちゃった」
と今にも泣きそうな顔をして、愛海の洋服の裾を掴んだ。

「そっか、じゃママ一緒に探そうか」
「うん」
「お姉ちゃんと見つけよう、僕名前なんて言うの?」
「僕、和也っていうの」
「和也くんか、じゃ探しに行こうね」

愛海は男の子と手を繋いで歩き始めた。
「人多いね、ママどんな学校してたか分かる?」
「えーっとね、髪長くて城のお洋服に紺色のスカート履いてた」
男の子は、母親と父親の服装を愛海に話していた。

1、2分して海斗が戻ってくると、そこには誰もいなくなった。
「あれ、愛海のやつどこ行ったんだよ!だから方向音痴は困るんだよ。ったく!」
海斗は怒りながらも愛海を心配していた。

「愛海ー!どこだよー!」
ソフトクリームを両手に持って愛海を探す。

愛海と和也くんは、10分程歩く。親御さんらしき人を迎え発見した愛海。

「ねえ、和也くん。あそこでキョロキョロしている人お母さんじゃない?」
「あっ!ママだ!」
和也は、母親の元へ一目散に駆けて行く。

「ママー!」
「まあ、和也!探してたのよ。ママが芽を離しちゃったから、ごめんね」
「ううん、僕こそごめんなさい。お姉ちゃんがママとパパ探してくれたんだ」
愛海の方に振り返り、指を差す。

愛海はお辞儀をして、和也の元へ歩く。
「あなたが、探してくれたんですか?」
「ええ、偶然近くにいて。和也くん泣きそうな顔してたので、それで」

「本当にありがとうございました。なんとお礼を言ったらいいか」
「いいえ、お父さんとお母さんに会えて良かったです」

「和也、お姉さんにお礼言いなさい」
「お姉ちゃん、ありがとう。バイバイ」
「バイバイ、気をつけてね」

その親子は、愛海に丁寧にお辞儀をして帰って行った。

愛海はしばらくその親子の後ろ姿を見送っていた。

「お前、いいことしたじゃねえか!」
後ろから聞き慣れた声がした。
愛海は後ろを振り向くと、そこにはカイトが立っていた。

「あっ、海斗......ごめ......」
話の途中でキスされた。
「ん......」
海斗は愛海を強く抱きしめた。

「愛海、どこ行ってたんだよ。すげえ心配したんだからな」
「ごめん、迷子の男の子が...」
「何も言わなくていい。ちゃんと親御さんの所連れてったんだろ?えらいよ、愛海は」
愛海の紙を優しくなでる。

「海斗......」
愛海は海斗の優しさが嬉しくて静かに泣いた。
「よしよし、いい子だ愛海は」
背中を優しくさする。

海斗の顔を見て。
「もう、子供じゃないんだから」
「はいはい」
「それより、ソフトクリームは?」
「は?とけちゃったに決まってんだろ。俺はアイスより愛海のが大事だ」

「私も海斗が大事」
「だろ?帰ったらお前の可愛い声たくさん聞かせてもらうからな、覚悟しとけよ」
「もう!海斗の変態!」

いきなり大きい声で言ったので、周りはざわつく。
「ほら、行くぞ!愛海」
「うん。海斗好き」

いきなり頬にキスした。
「っ!お前なあ」
愛海を睨む海斗だけど、優しく手を繋いでいた。

愛海は、家に着くまで海斗の隙を見てキスをした。
「やめろって!もう、分かったから」
海斗は半分怒っていた。