桜が咲き始めたある日のこと。海斗はマンションのベランダで外の景色を眺めていた。

「海斗!あのさ」
「なんだよ、愛海」

海斗の隣にぴったりくっつく愛海。
「来週なんだけど......」
「なに、この距離近すぎるだろ」
「だめ?」
「別に、こういうことされるの期待してた?」

海斗は愛海の肩を抱いた。
「っ!海斗......好き」
「は?」
海斗は眉を寄せて、愛海をじっと見る。
「綺麗な顔が台無しだよ?そういう顔すると」
「なに言ってんだよ、お前だって可愛い顔してんだろ。バーカ」
海斗は急に恥ずかしくなって、下を向く。

「あれ?海斗顔赤いけど、どうしたの?」
海斗の横顔を見て、頬に触れるだけのキスをした。
「っ!お前、責任とれよ!」

海斗は愛海の口を塞いだ。
「ん......」
愛海からのキスでスイッチが入ってしまった海斗。

胸元が開いた洋服の下に手を忍ばせる。
「ちょっと海斗、ダメ!」
「なんでだよ」
「ここ外」
「お前が、そんな格好してるのが悪い」

愛海は、胸元が開いた洋服に短いスカートを履いていた。おもわず自分の格好を確かめる。
「別に他の男の人に見せてるわけじゃないもん」

愛海は、海斗の家に来る途中、男の人が愛海の胸元をチラチラ見てたのを思い出した。

「そういうとこ、男はしっかり見てんだよ。愛海それよりなんか話があったんじゃないのか?」
「あっ、そうそう。来週桜も満開になりそうだから、海斗とお花見行きたいなあって思ってるんだけど、どう?」
「うーん、最近撮影が続いててさ。来週行けるか分かんねえな」
「仕事忙しいの?」
「まあな」

海斗の職業はモデル。21歳長身でスリム、イケメンな容姿は人気者。

女性にモテる海斗だけど、愛海のことを一番に考えて愛している。
海斗の曖昧な返事に、寂しそうな顔をしてしまう愛海。

「なんだよ、そんな悲しい顔するなよ」
俯いている愛海の両肩を掴む。

「行けるか分からないなら、私が、来夢と行こうかな」
「えっ⁉︎あいつとは絶対行くなよ」
海斗は、愛海を強く抱きしめた。

「海斗、ちょっと苦しいよ」
「ダメだ、あいつと行かないって言うまで離さないからな」

来夢は、双子の兄。海斗は来夢を昔から好きではなかった。大人になった今でもその理由は、幼馴染の愛海にも分からなかった。


「分かったよ、来夢とは行かないから安心して?」
「ほんとだな?」
ようやく、体を離してくれた。

「うん、じゃ調整してくれるの?」
「ああ、なんとか言って休みもらうから」
「いい返事待ってる」

「ああ。愛海、好きだよ」
「私も海斗」
愛海の口を塞いだ。


爽やかな風が吹いて愛海の長い髪を揺らした。