「それって……」


あの時、既に、そう思ってくれていたってこと――?


「そういうこと」


そう言った声は、少し照れているようにも聞こえる。


「ずっと……」


背中に回されたてのひらに、一段と力が込められた。


「ずっと、ゆかりにもう一度会える日を待っていた。あの海岸に出かけて行ったのは、一度や二度じゃない」


偶然、じゃなかった――?
私が来る日を待って――?


大人で、いつもどこか余裕があって。
時々毒舌で、その広い背中は私にとっては大きすぎる存在で。


でも、暁さんは、いつだって私をありのままの存在として、見てくれる。


私を待っていてくれたんだ――。


偶然の再会なんかじゃなかった。


「暁さん」


嬉しくて、暁さんの大きな背中を力の限り抱きしめる。


「大好きです」


冬の日の昼下がり、不器用な大人は、幸せを噛みしめる――。