「暁さん……」

「ゆかり……」


甘く切ない声が私のなんてことない部屋に響いて、どちらともなく唇を寄せた。

すぐにタバコの味がして。
暁さんのキスだって、安心する。

丁寧に重ね合わせた唇に温もりがうまれ心地よさから吐息を零す。


「ゆかり」


低くて掠れた声が私の中にいっぱいになって、ただ暁さんのことだけしか考えられなくなる。


「ゆかり……」


キスの合間に何度も名前を呼ばれて、ふわふわとした身体は気付くと抱きかかえられていた。


薄明りの部屋の中を、暁さんが踏みしめていく。
玄関からすぐに見えるベッドにそっと横たえられた。

私を見下ろしてくる暁さんの目は、優しくて激しいオトナの男の目――。


その目だけで、私の身体はもう暁さんのものになる。


「この四日、おまえのことだけを考えた。俺の発した言葉、おまえの見せた表情、ゆかりがこの瞬間何を思っているのか……。不安だったし、怖かったよ。だから、まずは、おまえを感じたい。俺の腕の中にいるんだと、実感していいか……?」


そんなことを言われたら――。私なんて、こくんと頷くのが精一杯。


それからはもう、ただ暁さんからの熱に溺れて、
心も身体も嫌というほどに溶けあった。

いつも以上に優しくて激しくて、時に労わるような、時に貪るように求められて、暁さんの腕の中で我を忘れて自分を解き放ってしまった。