「だけどね――」
こうして会おうと思えば会える。
手を伸ばせば触れられる。
それは、決して当たり前なんかじゃない。
ただの他人だった男と女が、近付いてお互いを想って、でも、その先を続けていくには大切なことがたくさんある。
大好きだから。
誰よりも大切な人だから、自分の思いをちゃんとぶつけたい。
暁さんの腕の中でくるりと身体を反転させた。
この日初めて、間近で暁さんの目を見つめる。
その目も、これまで見たことないどことなく切なげで不安そうな、そんな目だった。
「私は、やっぱり、暁さんと一緒にいたいと思うの。ずっと傍にいられたらって思う。どんなに不安になっても、暁さんの気持ちが見えなくなったとしても、私の気持ちだけは確信できるから。だから、暁さんにそう伝えたいって思った」
”ずっと”なんて、重いかもしれない。
大人なら適度な距離も必要かもしれない。でも、誰よりも近くにいたい。その隣にいるのは私でいたい。心の底からそう思える人だから、誤魔化したり逃げたりせずにその想いを伝えたい。
「ゆかり……。俺も同じだよ。この先俺の傍にいるのはおまえだけだ。どんなに面倒だと思ってもおまえと向き合うのをやめようとは絶対に思わないから。それだけは分かってほしい」
真剣で真っ直ぐな暁さんの目。
ごつごつとした大きな手のひらが私の頬にあてがわれて。
愛おしげに触れてくれるから、心までも直に触れられている気がして来る。



