”これから職場を出ます”


というメールを暁さんに送信して、マンションに向かった。

駅から徒歩5、6分の道のりを全力疾走する。マンションが見えて来て、暁さんに電話しようとスマホを取り出したところで、暁さん自身の姿が見えた。


「暁さん!」


私のマンションのエントランスのところにたたずんでいる。


この寒い中、外で待っていてくれたのだろうか。
慌てて暁さんの元へと走り出した。


「ゆかり……」


私に気付いて、暁さんが私を見てくれる。
ただの四日会っていないだけなのに、もうずっと顔を見ていないような感覚に襲われた。


「ゆかりっ」

「暁さん……?」


いきなり私の身体を囲い込むように抱きしめて来た。
暁さんのコートがとても冷たい。
やっぱり、かなりの時間待っていてくれたのだろう。


「どうしたの……?」


突然抱きしめたりして、私はただ慌てふためくばかりだ。


「金曜日はいつも私が暁さんの家に行ってるのに――」

「もしかしたら、今日は来ないんじゃないかって。そう思ったら、ここに来ずにはいられなかった」


暁さんの腕にさらに力が込められた。


「暁さん……」


私の過ごした四日間と同じように、暁さんも私のことを考えていてくれたのだろうか。


「ここ、外ですし、とりあえずうちに」


かなり冷え切っていた暁さんの身体と人目が気になって、暁さんの腕を解き自分の部屋へと向かった。