「ちょっと、皆さんで見ないでくださいよ」


そう言ってからふっと息を吐くと、瀬崎君が口を開いた。


「別に、俺にしてみればそんな大層なことじゃないです。いろいろあって離れていたので、縛られたくないとか自由でいたいとか、そんな発想はなかった。むしろ俺の方が、一刻も早く妻を俺に縛り付けておきたいと思っていたかもしれません」


大真面目な顔で瀬崎君がそんなことを言った。
一同が全員、言葉を失う。


「……奥さんが羨ましい。私も、『縛り付けたい』なんて言われてみたい……」


私の隣に座る、若手の女の子が遠い目で呟いた。
それが静けさを破り、皆がわいわいと口を開き出した。


瀬崎君はどちらかというと、硬派なタイプ。
女の人と不必要に関わることもなく、無駄なことも言わない。

そんな彼の見せた、愛情深い一面が衝撃だった。


きっと、物凄く奥さんを愛しているんだろうな。


瀬崎君をいじりたおしている他の同僚たちの横で、私は一人そんなことを思っていた。