「んん……」


カーテンの隙間から零れる日の光で目が覚める。
窓際に置かれたベッドのせいで、貪るように寝ていてもどうしても起こされてしまう。


まだ、寝てたい……。


冬の日の朝ほど、布団の中が恋しいことはない。
部屋の中の冷え切った冷気から身を守ってくれて、ぬくぬくとしていて抜け出したくなんかない。

陽射しから隠れるように布団を更に上まであげようとした時――。


「わぁ……っ」


布団の中の大きな物体が動き出して、私の身体に覆いかぶさって来た。


「ちょっ……、暁(アキラ)さんっ」


まるで抱き枕にでもなったかのように私はあっという間にたくましい胸と腕に身動きを取れなくさせられる。


「ちょっと……?」


でも、当の本人はまだ夢の中にいるようだ。


無意識でやってるのね……。


仕方なく、なされるがままになる。
前の日の晩、嫌ってほどに抱かれた胸と腕――。そう思うと、一人勝手に熱くなってしまいそうになる。

気怠い週末の朝。何よりも幸せを感じる。


一週間仕事でへとへとになった身体を、かわいがって癒してくれる場所を見つけたから。


温かい胸は、私をさらに幸せにしてくれる。


初めてあった日から一年後に再会して、それからすぐに恋人という関係になった。

それから季節が冬に変わった今も、こうして二人で過ごしている。


あの、不敵な表情で笑う、無精ひげを生やした名前も知らなかった男。


今では私の大切な人――山浦暁(ヤマウラアキラ)38歳。


口が悪くて、厳しいことばっかり言って、煙草の匂いがする大人の男。
そして、私をとびっきり甘やかしてくれる恋人だ。