涙の雫が引いて行ったのを感じて目を閉じる。

そうすると、入社してからの十年間が八ミリ映画の様に映し出された。


厳しい就職活動で得られた職場で、とにかく自分の確かな居場所を作ろうとがむしゃらに頑張った。

付き合っていた人とのデートよりも残業を優先したりして。


『そういう責任感の強いところが好きだから』


そんな言葉を鵜呑みにして、恋人を犠牲にしては仕事に明け暮れた。


『ゆかりには仕事があるから俺はいらないだろ? 他に俺を必要としてくれる人がいるから』


そう言って、いつも私が仕事を肩代わりしていた同期の奈美と結婚した。


責任感の強い私が好きだって言ったじゃない――。


『仕事にいつも一生懸命な姿をいつの間にか目で追っていた』


入社して以来同期として付き合って来た彼は、そう言って想いを打ち明けてくれたのだ。

いつも、つい頑張り過ぎてしまう自分が女として可愛げがないような気がしていたけれど、同期として友人として付き合って来た時間が長い分、そんな彼にそう言ってもらえて心底嬉しかった。

私は私のままでいいんだって……。


バカみたい――。

馬鹿な私は、彼と奈美がいつの間にそんな関係になっていたのか少しも気付くことが出来なかった。