あんなにも真っ青だった空がオレンジ色を纏い始める。

目に映るすべてのものを鮮やかに照らしていた太陽が沈んで行けば、街も海も夕焼けに染まって行く。

でも、その色さえすぐに変化した。

オレンジだった空は、もう紫色へと変化してどこからともなく闇を連れて来る。

その先にあったビルたちが明かりを放ち始めれば、もうすっかり私の周りは薄い闇で覆い尽された。


心地よかったはずの時間が、急に寂しさを引き起こす。

遊歩道には人だってまだ歩いている。
向こう岸の町並みからは綺麗な夜景だって臨める。

それなのに、意識から離れていた孤独が身体中を締め付けた。

自分のすぐ横に置きっぱなしになっていたビニール袋の中のお酒は、まだ1、2本しか減っていない。

ぬるくなって水滴だらけになった缶チューハイを手に取った。

プルタブを引き一気に飲み干す。

少し肌寒くなっていた身体を一気に冷やした。


ぬるいくせに、冷たいんだな――。


一人笑おうとしたら、顔が歪んで上手く笑えない。


これまで自分を支えて来たものが崩れ落ちて空っぽになった。
そもそも、自分を支えていたものなんてなかった――。


こんなところで泣いたりしたら、きっと取り返しのつかないことになる。
ぐっと堪えてもう一度缶を口に運んだ。


「やっぱり、あんたか……。こんなところで、一人、何やってんの?」


暗くなりきる直前の薄暗さの中、喫茶店で会った男が見下ろしていた。