無色透明の初恋




「んじゃあ帰りますか」

春賀が笑顔で近寄りながらそう言った。

「待って、二人に何を話したの?」
「ん?ん〜、秘密」
「秘密って…。これは私に関係する事でしょ」
「そうだとしても秘密。さっ、早く帰ろう」


本当に言いたくないらしい。
彼は私がこれ以上傷付けたくないから黙っているのかもしれない。
どれだけ追求しても彼は教えてくれないだろうし、ここは引き下がろう。

「ちょっと待って」

私はカバンの中を探った。
見つけた物はまだ温かかった。

「はい。待ってくれたのと、あともう一つ。私を…、その、傷付けないようにしてくれたお礼」

私が彼に渡したのはホットの缶コーヒー。
彼は受け取ると両手を温めるように缶コーヒーを手で包んだ。

「ありがとう」
「別に頼んだわけじゃないけど、でも、春でもまだ寒いし」
「うん、ありがとう」

素直になれない私を彼は分かりきってるかのように頷いてくれた。
そして嬉しそうに頬を赤らめてプルタブを開け、一気に飲み干した。