彼は決して自分のことを話さないだろう。

白の彼はそう言った。

私はどうしても彼のことを知りたい。

知らなくてはならない気がする。

私の為に用意してくれた部屋にこもり、メモ帳を取り出して今までのことを整理することにしよう。

彼は天使にも悪魔になりきれずあちら側の世界を追い出されたと以前言っていた。

夕紀くんと宙は私を守れと神から指令が下され現在に至る。

ここでひとつ矛盾点が浮かぶ。

宙は世界を追い出されたのに、神様からの指令が下ったこと。

守れという指令は嘘…ではないだろう。

そうなら夕紀くん達は親友であろうと今では敵対関係にあったはずだ。

この指令は、神様からの密令なのか?

夕紀くんと宙は天界では浮いた存在だっただろう。

そして私の存在も、

一部の天使達からは厭われるものだ。

下手にそこらへんの天使を私の守護天使にさせるには危険が高かった。

それであればなんとなく、彼等に指令を下したのは納得が行く。

『宙は結局、何者なの?』

赤い瞳と空色の瞳

漆黒の翼に純白の翼

まるで正反対の性質が彼にはある。

両親は権力者と言っていたけど……。

もし仮にだ

神様が宙に密令を下したなら夕紀くんはどうしてそれを知っている。

二人の共通点は

そう

悪魔の性質

彼等はなんらかの、絆がある。

夕紀くんは、彼の正体をきっと知っている。

『そう言えば…』

今日、瑠璃に遭遇した時、瑠璃と玲夜は明らかな主従関係にあった。

瑠璃の家は魔界で美食家の名家。

彼女は宙を異質の存在として扱ってはいなかった。

むしろ敬意を示し様をつけて呼んでいた。

そして彼女が狙うほど血が美味しい。

『彼は……』

なんとなく、なんとなくだ…

そう、途方もない考えが頭に浮かんだ。

今書いたメモを引きちぎり、毎日書いている日記帳に挟む。

そしてまた、頬に雫を伝わせた。