ー5.4.3.2.1

「あけましておめでとう!」

いろんなところから聞こえる新年の挨拶。

私と宙もお互いに言い合う。

御籤を引いてみるとまさかの出来事に眉をひそめた。

『……凶』

「凶ってなに?」

宙も不思議そうに自身の御籤を眺める。

お互いに凶を引いてしまったらしい。

『不吉だな……』

「大丈夫、一緒にいればなんでもできるよ。」

確かに、宙がいればなんだってできる気がする。

それに私は神様の孫なんだ。

いざとなれば運命を変えられる。

『ねぇ、宙』

「どうしたの?」

貴方を好きだなんて言ったら、貴方はどこかへ消えてしまいそうだから。

『私は宙といれて幸せだよ。』

感情を教えてくれた。

幸せ、そして愛を教えてくれたんだ。

「……どうしたの?美影。」

『なにもないよ』

「嘘」

『宙、前に話してくれるって言ったよね。
私への恩ってなに?』

「……まだ、言えない。」

それはいつになったら聴けるのか。

この調子で行くと一生聴けない気がする。

『宙、転校してくる前にも、
私がまだ幼い子供の頃に会ったことある?』

「…それは」

明らかに戸惑っている彼の目。

私がもう一押しと口を開いた時、地面は揺らぐ。

ーゴゴゴゴゴ

『な、なに!?』

至る所から悲鳴が聞こえてきた。

日和たちには夕紀くんがついているけど、大丈夫だろうか。

私達は幸いにも人気のない場所にいたため人に揉まれずにすんだが……。

「美影」

『あ、あんたはっ』

「玲夜!?」

なんで此処に?

玲夜は大沢賢哉先輩の体を乗っ取って終業式の日散々な目に合わされた。

あの時の恐怖は父に相当する。

「久しぶり、ここの世界は祭りごとをしているらしいし、俺達もぱあっとやってやろうと思ってね。」

『手間のかかる……』

私は即座に周りから見えないよう、そして被害が行かないように周りに結界を貼った。

「へぇ……かなり強くなったみたいだね。
でもまだまだ、俺には足りない。」

宙は私を守るように前に立った。

正直今の結界でも少しずつ体力は削られる。

まだ大丈夫だが玲夜の言う通り全然力が足りない。

このままじゃ宙に守られてばかりだ。

「まぁお前は彼女を守ると思ってたから、とっておきの相手を用意したよ。」

ーパチン

玲夜が指を鳴らした瞬間、彼の背後からフードを被った女が現れた。

玲夜はウェーブした白銀に青っぽいいろがついている髪。

そして少し覗ける女の子の髪は薄い緑色だ。

「初めまして美影様、宙様、私は瑠璃と申します。」

丁寧に名乗ったと思うと次の瞬間彼女は私に飛び掛ってきた。

それはもう狂気的なスピードだ。

一瞬見えた赤い目はおぞましいほどの血色。

ードンッ

宙は彼女を地面に叩きつけ、そこはひび割れる。

「よそ見するな。」

はっとして前を見ると玲夜は楽しそうに笑いながら歩み寄ってきた。

だめだ

手の震えが止まらない。

私はとりあえず剣を創造し構えた。

「そんな震えた手でどうするつもり?」

耳元で聞こえた。

いつ?

目で追えなかった。

もはやそれは瞬間移動のレベルのスピードだ。

『くそっ』

足を魔法で強化して玲夜に蹴りを入れようとするが牽制される。

「そんなんじゃ勝てない。」

私は途端に体を透明化させて息を潜めた。

まともにやりあったら負ける。

ージャリッ

地面が神社周辺だからか砂利、これじゃあ居場所がばればれだ。

そんな考え事をしていると奴が鋭い爪で襲いかかってきた。

なにかいい手はないのか?

ーガキンッ

流石に体格差、実力差がありすぎる。

剣の刃は折れ、後ろの地面に突き刺さった。

「模擬戦じゃないんだよ」

ードンッ

玲夜が地面を殴るとそこから大量の岩の刃が伸びてくる。

『ひっ』

思わずでた悲鳴に反応してか、宙は私を抱えて地面を蹴った。

結界を貼らなかったらこの神社は今頃……。

ぞっとして下を見ると瑠璃という女の子が私達めがけて跳ねあがる。

『ありがとう』

「玲夜は力技が得意だから、絶対に捕まったら駄目だよ。」

『無茶な…』

宙の腕が視界に入った。

軽い怪我、もう傷もふさがっている。

宙、さっき私を庇って……。