「気持ち悪くない。」

『っ…』

「前に聴いたでしょ、美影は穢れてなんかない。」

「はぁ?正気かよ、お前も可笑しいんじゃねぇの?さては美影の顔だけに惚れてんじゃねぇ?」

宙の悪口が聞こえた瞬間、何かが自分の中で切れた気がした。

怒りが一気にくる。

「振り返るな!」

『……宙』

「胸張って生きていいんだよ。」

涙が頬を伝う、宙、お母さん……ありがとう。

「その化け物に騙されてんじゃねえの。」

「口を開くな。」

突如声を低くした宙を振り返らずに歩く。

少し悲鳴をあげた父。

赤い目を見たのだろうか。

もうどうでもいいや。

私は私の道を進もう。

冬の日のトラウマは決して消えるものでは無い。

けど架や日和と一緒にいればなんだってやり直せる気がする。

「待て!!」

「行き過ぎた愛情表現は、トリエスタさんには通じなかったみたいだね。いつまでも引き摺ってるのはあんただよ。」

「……トリエスタ、トリエスタ…。」

物語は必ずハッピーエンドじゃない。

父と私の綴った記録は、ここで終わりだ。