「今日は楽しかったなっ」
夕紀くんの家を出ると途端に肩が震えた。
でも架といると凄く元気になれる。
「送ってくよ」
…いけない、家出していたことを忘れていた。
でもそんなこと言ったら彼は凄く心配しそう。
『ううん!私バイト先に用事があるから大丈夫だよ。』
「んー…そっか、じゃあバイト先まで送ってく。」
ごめんね、嘘ついちゃって。
『ありがとう』
案外バイト先は近くてあまり手間をかけさせずに済んだ。
「んじゃ、また!」
『また』
さて、どうしたものか…。
このままでは野宿…いやそうなればホテルに行くが。
ここらは都会だし学校に近いしホテルなんかに寄っているのを誰かしらに見られるのは気が引ける。
明日の朝にはバイトもあるし…。
「あいつの料理美味しかった。」
エルはいつの間にか人型になって伸びをしている。
私も猫に生まれたかったな。
いや、彼は猫ではないのだが…。
息を吐いてのろのろと歩く。
一気に静かになった。
寂しい
そう思うのは温かさを知ったから。
もう私は孤独じゃない。
感情を取り戻した。
そう思うとなんだか勇気が湧いてきた。
「美影?」
『日和!』
振り返るとコンビニ袋を下げた日和が立っていた。
おつかいの帰りだろうか。
「どうしたの?バイト帰り?」
『…ちょっと家出』
ちらっとエルを確認するとどこにも姿は見えない。
どこに行ったんだろう…
「おぉー!美影って優等生だと思ってたから意外だなー。私も結構家出してたよ。」
『日和が?』
「中学の頃は精神面で安定してないからねー」
意外…
「んじゃー泊まってく?」
『ぇ』
「遠慮しないで!行くよっ」
半ば強引に引っ張られて行くものの本気で感謝している。
友だちの家に泊まるなんて初めて
友だち…
『ふふっ』
「え、なにっ」
『嬉しいなぁって…。』
今日は凄く発見のある日だ。
冬がいつか大好きな季節になりますように。

