なんだか不思議な気分だ。
こうやって知らない町に来て、隣には私のことを主と慕う白い人外。
これが全部三週間ほどの出来事。
三週間で人はここまで変われる。
そう思うと、今までの空虚な時間はなんだったのかともはや馬鹿らしくなってしまうものだ。
『あの夕日もさ』
「?」
『あの夕日も、今まで綺麗だなんて思ったことなかったんだ。
綺麗なものを綺麗って言えるのは案外難しいことだよね。』
綺麗と思えなければ、綺麗だと言えない。
今までそんなこと、興味すらなかった。
『私自身が穢れてるから、そう思うのかな。』
皮肉に笑うとエルは顔色ひとつ変えず言い放つ。
「美影は綺麗だ。僕から見たら逆にこの世界は穢れていて美影だけは輝いてるよ。」
なんの迷いもなく答える彼に後ろめたく思った。
違う、本当に私は穢れているの。
少しの気晴らしで来た冬の海を眺めると、なんだかこの世界にひとり、取り残されたような感覚になる。
『綺麗…』
ーギュ
『…エル?』
「わからないけど、“また”美影が遠くへ行きそうな気がした。」
『行かないよ…“エルが知らない場所”へは。』
「意地悪だなぁ…」
そうだね、エルは何千年と生きてる、知らない場所なんてないだろうね。
少し笑うと元来た道を引き返した。
もし、私が何もかも忘れてしまっても
どこへ行ってしまっても
見つけてね。
_______エヴァン

