ーガッ

『っ、エリック!?』

敵の奇襲をその場に素早く現れた彼が受け止めた。

「戦闘で気を抜くとは…姫さんもまだまだだな。
……それにしても、手だけで攻撃してくるとは何者だ?」

そう、彼が相手にしていたのは刀を持った右手だけ。

本体がないのだ

そんなことが出来る輩はひとりだけ…

『EG…彼女が近くにいる。』

「EG……?奇妙な名前だな」

『彼女は全身を部位ごとに操作出来る。
どうして生きてるのか、不思議だよ。』

今度は左手が飛んでくるのを、夕紀が受け止める。

『夕紀っ』

「大丈夫」

夕紀が私から離れると露わになっている厚い胸板にきらりと光るものが揺れているのが見えた。

それは、クリスマスパーティーの時に夕紀にプレゼントしたものだった。

『それ…』

「……お前がくれたネックレス、これを見ると自然と元気が湧いた。」

“ありがとう”と夕紀は私の頭を撫でた。

ずっと、大切にしていてくれたんだね。

「背中、貸してくれ」

『もちろん』

背中合わせになって次の攻撃にふたりで備える。

「……チッ 何見てんだよエリック」

「いいや、夕紀がそこまで他人を信用するところを見たことがなかったからさ。」

エリックは驚いているのか喜んでいるのか、そうかと思えば哀しい表情を見せる。

なにがなんだかよくわからないが、喜んでいいことなんだよね?

「ちょっとちょっとーここまで体を気付かれずにひとつづつ移動するの大変だったのに、私の事忘れてないー?」

そうか

身体を別々に運んであの戦闘から離脱…

私は遠くに見える四大天使と王国騎士の各部隊の隊長の三人を見やった。

力はごぶごぶ

少し、ラミアと闘うアスタロッサの顔が苦しそうに見える。

「よそみ?」

ゾッとした

顔だけが私の目の前にぱっと現れる。

隙を与えぬよう私は忍ばせておいたナイフで斬りかかった。

「ふふっ、強がっても無駄だよ?」

『私は、私のしなければならないことをするだけよ!!!』

EGはバラバラになったからだを一旦元に戻すと関節を鳴らして構えた。

「いいわね、その目」

そしてふと笑って悪戯っ子のような顔をする。

それからはとても長かった。