うん、出来た。
私は合わせて五つの料理をテーブルへ並べた。
奥さんは匂いに釣られてか振り返る。
「お嬢さん、貴女は……アメリア様?」
『はい!食べ物屋のおじさんに頼まれて料理をしに来ました。』
「あらあら……とってもいい香りっ」
奥さんはナイフとフォークをもって料理に手を伸ばす。
やっぱり神界でもナイフとフォークを使うんだなぁ……。
「美影!俺も食べていい?」
『うん』
二人が料理を口に運ぶ。
架ならどんな料理を作るのかな。
きっと凄く喜んでいろいろ試すんだろうな。
「「お、美味しい」」
『本当……?』
「こんな料理どこで……私にはこんなの思いつきませんわ。」
『これは私の世界で見られる料理で……』
料理の仕方を一通り教える。
簡単な料理だけどこの世界では未知なのかもね。
「これ、夕紀の大好物の……」
『オムライスだよ。』
残念ながらライスはなかったからほかの食べ物で代用したんだけど……
「あいつにも食べさせてやろうな。」
優しく私を撫でる大きな手。
大きく頷くと奥さんは不思議そうに首を傾げた。
「あらあらまぁまぁ」
そして楽しそうに笑って私達を見ていた。
「ありがとうございます。アリシア様のお陰でスランプから脱出出来そうです。」
『お役に立てて嬉しいです。』
「そうだ、お礼に……」
奥さんはなにやら急いでどこかへ行くと何か袋を持って現れた。
「これを」
貰った袋を開けると小さな笛が入っている。
なんだろうこの笛……
吹くにしてはあまりに小さい、だがとても繊細なデザインが施されている。
「これはどうやって使うか正直私達にもわからないのですが、何か特別なもののような気がするんです。この家に古くからあるものらしいけど、私達が持っていても意味がない気がして……。」
『そんな大切なもの、わ、私なんかが受け取れないですっ。』
「ではこう考えてください。このまま家に永遠に使われないまま放置されるか、世界をアリシア様と共に飛び回るか、どちらがこの笛にとって幸せでしょう。さぁ、受け取ってください。」
奥さんの頑張り屋な手が私の手を握った。
紐がついていたため笛を首から下げ、袋をお返しする。
『ありがとうございます。大切に使わせてもらいます。』
「うんうん、アリシア様の料理を食べれるなんて、私贅沢者ですわ。もうこのまま冥界に行ってもいいです。」
冗談かわからないほどにこにこしながらいうので心配になる。
『まだまだ生きてくださいね。またご飯食べに来てもいいですか?』
「勿論です!それならはりきって料理の腕をあげないといけませんね。」
宙は余り物の野菜などをじっとみていた。
珍しいのかな……?
『じゃあ私達はそろそろ行きますね。』
「はい!今日はありがとうございました。」
そのあとなんだかんだ井戸端会議のように話した後別れた。
まだ日は昇っている。
『あんなに気さくな天使もいるんだね。』
「俺もあんな夫婦は初めて見たよ。」
『なんだか人間らしいや……』
ここに来てからは正直息のつまるようなことばかりだったから……。
まだまだ賑わう市場、キラキラと輝く神界の街。
どんなに綺麗でも、やっぱり私あの世界がいいな。
前までは恨んでさえいた世界がなんだか恋しい。
生きていると何があるかほんとにわからないな。

