天使と悪魔の子


神界の戦士の証である青縁の白いマントと相変わらず不思議なレースの服を纏い、緑色の宝石のついた神話でよく見る金色の腕飾りを付けて支度を整える。

緑色の宝石はこの隊の者という証だ。

翠の神殿の戦士だから緑なのかな。

もはや相棒のように肩に長銃を下げて駆けた。

『うっ』

「美影!ごめん受け止められなくて…。」

『ううん』

廊下を走った私が悪いんだし…

「今日はフレンチさんは四大天使とその副官達の会議に出てるんだ。」

『あ、そうなんだ……』

フレンチ隊長達に稽古をつけてもらおうと思ったんだけど……。

まぁいいや

『戦いの前にきちんとこの神界を見ておきたいな。』

「美影らしいね。」

『ひゃっ』

彼は私の足の関節と腰に逞しい腕をまわして抱き上げる。

前までとは違って少し緊張する。

距離が近い

『じ、自分で飛べるよ』

「じゃあ行こっか」

話を聞いていないのか空に飛び立つ彼。

その横顔はいきいきしていて格好良い。

いや、何を考えてるの私は…

「美影?」

「え?あ、なんにもないっ」

顔を見すぎていたのか不思議そうに宙の綺麗な澄んだ瞳が私をうつす。

前までは怖くてこの瞳から逃げてた。

でもそんな日々は彼が変えてくれたんだ。

ートサッ

『わぁ』

視界いっぱいに広がる沢山の建物に商店

人間界のように食べ物屋さんはないけど服や武器、宝石などいろんなものが並んでいた。

そして上を見ると大きな籠を持って仕事をこなす天使達が飛び交い下では子供の天使がきゃっきゃと遊んでいる。

花びらがひらひらと舞い頬を掠めた。

『花のいい香り…』

「市場だよ、ここら辺に住んでいる戦士じゃない天使達は皆ここで働いている。」

『ここ以外にも天使達が住んでいるの?』

「うん、神界は魔界みたいに広いからね。ここ以外に村も存在するし綺麗な市場も存在するよ。」

そうなのか……

じゃあその人たちも守らないと

ードンッ

「きゃっ、お姉ちゃんごめんなさい……」

ぶつかって目を潤ませる天使の子供。

可愛すぎる……

『ううん、気を付けてね』

「美影、あっちいってみよ!」

優しく腕をひかれて彼について行く。

今日はやっぱり凄く楽しそう。

市場にくることあんまりないのかな。

「見て!この髪飾り美影に似合いそうだね。」

『そ、うかな?』

「うん、ほらぴったり!」

楽しそうに髪飾りを私に当てる。

「あらあら、新婚さんですか?」

『し、新婚って……』

「ここでは16歳から成人なんだ。」

少し頬を赤くして笑っている宙。

どうしよう、なんでこんなに…。

「美影、あそこ食べ物売ってるみたい!」

『ほんとだ』

子供みたいにふたりではしゃぎながら駆けた。

ただ純粋にその時間が楽しかった

嬉しかった

『初めて見るものばっかり…』

「美影の料理は最高だからなぁ」

『本当に新婚夫婦みたいだよ。』

思わず目を合わせて笑ってしまう。

なんだろうこの果実、こっちは魚……?

「お嬢さん料理をするのかい?」

店のおじさんが珍しそうにきいてくる。

『はい』

「てかその髪色、嬢ちゃんが噂の……」

おじさんはさぞかし驚いたように綺麗に整えられた髭を撫でた。

「いいやー驚いたっ、俺の妻は時々食べ物好きの上級天使の食事を用意するんだけどよお、今ちょうどスランプに陥ってるんだわ。よかったら一度料理を一緒にやってくれねぇか?」

『は、はい!勿論です』

近頃料理をしていないせいか腕がうずうずしていたんだ。

「よかったぜー本当にありがとよ。あ、うちはあの家だから適当に入ってくれ!」

適当に入っていいのか……?

私は頷いて宙と共に指定された家へ向かう。

「なんか妙な縁が出来たね。美影といると新しいことがたくさんある。」

『私も宙といるとよく驚かされるよ。』

宙と出逢った日から、本当に退屈な日なんてなかった気がする。

悩んで悩んで

そして乗り越える。

今回の戦いも、絶対に乗り越えられる。

そんな予感がした。