場所を移して神殿の敷地内にある外の訓練場へ向かう。
「ハンデは…」
『ハンデは要りません。そして私は今回エルは使いません。』
「本気……?」
『本気だからです。』
エリック
貴方に勝てると思うほど自惚れてはいない。
『“私の言葉は魔法”』
魔女と謳われる私はこの世界でどれほど通用するのか、その踏み台になってもらう。
私は銃を構えて天空に向かって撃った。
そしてそれが弾けると同時にドーム型の闇の空間を作り出される。
『“真実の闇”』
「なるほど、闇魔法できたか。」
この魔法の真髄は闇魔法ではない。
闇魔法はどちらかと言うと不得手なほうだ。
これはエリックと接近戦にならない為の作戦でもある。
私の魔法
真実の闇は私の“精神”魔法を最大限に生かした闇の巣窟。
私が念じたものはそこでは真実となる。
例えば何もない所に林檎があると唱えればその場に林檎が現れる仕組みだ。
「なんだか厄介そうな魔法だなぁ。」
『ふふ、“ここは学校”だよ?“大人しく”しないとね。』
そう言った瞬間、途端に闇に飲み込まれて気付けば学校の中にいる。
“ここは学校”
これは真実となりここに現れる
そしてエリックに言った“大人しく”は
彼をここに閉じこめるための言葉だ。
周りを見渡し銃をいつでも撃てるように手に構えながら歩く。
どうやら私は図書室にいるらしい。
この学校は私が通っていた高校がモデルだからかなり動きやすい。
図書室の扉を開けて注意深く学校を歩いた。
ヒールを脱ぎ捨て裸足で廊下を進んでいく。
エリックは何処だ。
『“火事”だわ』
学校に火が点ってそれが一気に広がった。
炎は私が作り出したのだから自分には影響しない。
だけど彼はどうだろう。
ーカタッ
ひとつの教室から物音が聞こえて銃を構えた。
「ここ、姫さんの世界の建物なんだ。」
エリックは余裕そうに笑って一気に距離を詰めてきた。
反応して避けたものの彼の驚異的スピードがそれを制す。
「俺、神界ではスピードで有名なんだよね。」
彼は脇から短剣を取り出しそれを振り上げる。
「おわりだ」
その言葉に笑う
彼の後ろから彼を狙って銃を構えた。
それは私の幻影だよ。
ーパンっ
大きく銃声が響く。
この弾に当たった者は途端に眠りにつく。
そんな魔法を込めて撃った。
しかしそれは彼と私の幻影を通り抜けて壁に当たる。
『え』
「俺も幻術だよ!!」
裏の裏をかかれた……!?
後ろに彼が腕を振り上げたのが見えた。
だめ
こんな所で終わるなんて……
絶対に嫌だ
私は銃を地面に向けて撃ってその反動を活かして窓ガラスを割り外へ飛び出した。
彼は私の魔法の効果でこの学校から出られない。
そしてその外側もまだ私のテリトリー内だから真実の闇は有効だ。
『大変、“学校内が水浸し”らしいわ。』
ごめんねエリック
『“召喚拡大魔法”』
銃口を学校へ向けた。
『“雷蝶よ舞え!!”』
ーバンッ!!!!!
凄まじい勢いで銃口から電気と共に蝶が飛び出し学校に直撃した。
水浸しになっていた学校
水は電気を通して今頃彼は感電して気絶している頃だろう。
しかし、学校が突然光り出す。
雷ではない
「“創造魔法”」
私の闇の空間が全体的に光に包まれた。
「“女神の邸”」
目を開けるとそこは真っ白で綺麗な洋館のような場所だった。
まさか、私の絶対的な魔法が破られたのか…?
上書きされた……?
「姫さんの精神魔法は凄いけど、俺の創造魔法のほうが少し上だったらしい。」
創造魔法
全てのものを一から、又は無から創造することが出来る。
この能力の特性を持つ者はなかなかいない。
エリックはそう考えるとなかなかの術者だ。
「本当に姫さん強くなったよな。並の兵士じゃ相手にならないかも。“彼女を捕らえる檻となれ”」
彼はそう言って建物に剣を突き立てる。
そして地面は変形して私を取り囲んだ。
このままじゃ閉じ込められる。
上はまだ閉じていない
『“私は誰よりも速いっ!!”』
思いっきり地面を蹴りあげ上を目指す。
届け!!
ードンッ
行く手を分厚い壁に阻まれ地面に叩き落とされる。
周りを見ると光ひとつない真っ暗な空間
届かなかった…

