天使と悪魔の子


その日から数日

私はみるみる成長してフレンチさんの所へ向かった。

もう神界へ来て数週間経つ頃だろう。

だんだん私の中の神の血が覚醒してきてだいぶん強くなった。

瞳の色はついに戻らなくなってしまったくらいだ。

私は武器の銃を肩にかけてしっかりと前を見据えた。

『フレンチ様』

神殿の中庭で部下に稽古をつけている彼女を呼び止め跪く。

「……何をしているのです。神の血を継いでいる貴方様が跪くとはあってはならないことですよ。」

さっと顔を上げて彼女を見た。

宙、エリック、他にも沢山のフレンチさんの部下が私を見ている。

失敗すれば終わりだ。

『私はお願いをしに参りました。お願いがある時は頭を下げるのが私の育った国での礼儀です。』

突然の出現に周りの騎士達はどよめいていた。

それは宙やエリックも例外ではない。

『神からお告げがありました。もうすぐ魔界の者達が攻めてくると…。』

小さなどよめきが静かに消えた。

それは予期していたことなのか、それとも恐れていた事態なのかはわからない。

だがこうしてはいられないのだ。

『私には仲間が必要です。共に戦い、背中を預けられる仲間が……。』

「回りくどいのは嫌いです。」

フレンチさんの刺すような視線

それに負けじと見つめ返す。

『私には力が足りません。どうか力を貸してください。』

フレンチさんは鞘から剣を抜いて私の首元を指した。

「ふ、フレンチ天使長!」

近くにいた騎士がその様子に黙っていられなくなったのか口を出す。

それでも尚、私達は見つめ合っていた。

試されているのだ。

「いい目だ」

ふっと彼女は笑ってエリックに顔を向ける。

「エリックは私の隊の副長です。勝てたら望みを聞き受けましょう。」

エリックに……!

彼は私の教育係だった。

彼の強さなら重々承知している。

まだまだ経験の浅い私には勝てっこない話だ。

『……わかりました。』

でもここで諦めたら、なにもかも失う。

私は肩にかけていた銃を手に取った。