___________________
__________
_______
「店長!これはどうですか?」
「……」
店長と思わしき人に匙を投げられる。
それでも架は前を向いた。
料理人を目指して彼は刻一刻と成長している。
「店長!」
「駄目だ」
何度も何度も、彼は料理を運んだ。
これは彼の日々の記憶。
「おいバイト、俺用事あるから皿洗いしとけよ。」
「はい!」
新人だからと扱き使われても、一切弱音は吐かなかった。
「店長っ」
「……よし、これなら店で出しても悪くない。
まずは数日出してみるか。」
「っ!ありがとうございます!!」
嬉しそうに笑い、彼の瞳は燃え盛る炎のように熱を帯びていた。
映像が切り替わって、そこは日和の家になった。
架の手にはお弁当袋
制服を着ていた。
「日和」
「架……ごめん、なんかやっぱ隣の空いてる席見るとさ……。」
「飯作ったからさ、一緒に弁当食おうぜ。」
家の中に入って静かなリビングに二人は座った。
日和は制服を着ていなかった。
「美影のばか」
彼女の口から出てきた言葉に思わず驚いた。
馬鹿
言われた意味がわからなくてぐっと映像に顔を寄せた。
「私のこと、すっごく明るくていつもポジティブとか思ってるんだろうけどさ……私そんな人間じゃないよ。」
架はお弁当を広げて二人の間に置く。
「一緒にいた時間は少なかったけど、本当に美影や宙といれて楽しかった。あんなに純粋な子初めて見たもん。」
純粋なんかじゃない。
私を勘違いしている。
でもそれは、お互い様なのかもしれない。
「確かに周りに友だちは多いかもしれないけど、でも私、本当に心を許していたのは四人だけだった。
自分でもびっくりするくらい、みんなのこと大好きになってた。」
その言葉にいつの間にか涙が頬を伝っていた。
それはもう自然に、無意識に零れた。
私
こんなに
こんなに幸せでいいのかな
こんなことを言ってくれる友だちがいるなんて、本当に幸せ者だ。
「あの子一人で泣いてないかな?とか思っちゃうんだよね。あの時は酷いこと言っちゃった。」
ぽろぽろと彼女も涙を流し始める。
架はそんな彼女の口にごはんを丁寧に入れた。
「なっにすんのよ……美味しいじゃんバカヤロぅ」
架は笑って頭を撫でてやる。
「じゃあ俺達は、あいつらがいつ帰ってきてもいいように学校で待ってなきゃな。」
「っ…」
日和は何度も頷いてお弁当を口に詰める。
心做しか少し痩せているようにも見えた。
大好きなふたり
待っててね
夕紀を助け出して
魔王を倒して
会いに行くから。

