訓練が一段落して私は川に涼みにきていた。
あと少し、時間はある。
ゆっくりと川に足を入れてそのまま上を見上げた。
「わっ」
『っ!!!』
上を見た瞬間、紅い髪が目に映った。
そして凍てついた緑色の瞳が私を見下ろしている。
エリーゼだ
「アリシア、あんた暇そうだね。」
『驚かせないでくださいよ…』
彼女はマーシュ曰く危険人物
そして幼い容姿しているが実力は随一。
そんな人物と、まさかこんなところで遭遇するとは。
「気付かないのが悪いんだよ。そんなんじゃ瞬殺されちゃうじゃないか。」
ーキーン
「ほら、ね?」
首元には大鎌がすれすれまで近付いていた。
殺気が全くなかった。
息をするように、彼女は殺すことが出来るのだ。
私は短剣をそれに当てて鎌の上を回転して躱す。
「んーまだまだ」
ーカラカラカラッ
鎌の下から鎖が伸びてきて私の首にまとわりつく。
『う"っ』
「あははは!!……つっまんなぁいなあ!!!」
そのまま地面に落とされてむせ返った。
手も足も出ない
こんなんじゃ、勝てない。
こんなんじゃ……だれもついてきてくれない。
「あぁあ、やっぱりお前弱いわ。」
そう言ってエリーゼは去っていく。
それに言い返すことが出来なくて、どうしようもなく悔しい。
『どうしたら……』
「どうしたの?情けないよ。」
ふと、聴きなれた声がした。
その声の主を見ようと、私は重い身体を持ち上げ周りを見る。
神々しく太陽の光を受けて白銀の猫っ毛が揺れる。
月白色の瞳はいつも通り、無表情であった。
『ルミエール……』
「美影…いや、アリシア、時間がないんだ。」
その美しい指がいつの間にか頬に触れていた。
「僕を使って」
『……どういうこと?』
聞きたいことがいっぱいあるのに、何故だか彼を見ていると全て忘れてしまいそう。
「僕を君の一部として使うんだ。」
『エルを一部に?』
「アリシアの魔力を僕に分けてくれるだけでいい。」
『私の魔力を……』
エルの手を握って力をそこに注いだ。
すると彼は大きな、見たこともないような美しい獣に変身した。
「これが僕の本当の姿だよ。」
『綺麗』
ふわふわの身体で私を包んでくれる。
「僕はアリシアの望むものならなんにだってなれる。
君の、世界で最強の使い魔なんだから。」
『自信家なところは変わってないね。』
綺麗な毛並みを撫でてやると彼は人間の容姿になり私の前に跪く。
「でも、そんな僕を呼び出した君はもっと強い。」
『……本当に、そんな力があるのかな。』
私は先程脱いだ訓練用の靴を履いてエルを抱きしめた。
『おかえり』
「うん」
エルの手が背中に回される。
『架達は元気にしてるかな?』
「見てみる?」
『え?』
エルは少し笑って川から大きな水の泡をそこから取り出した。
ぐにゃぐにゃと曲がりながらそれは宙に浮く。
そして手をかざした瞬間
そこに映像が流れた。

