ーカランカランッ
『うがっ』
大きく近くの岩に体をぶつけなんとも不細工な呻き声が出た。
「姫さんやっぱり身体能力がなぁ…」
『……そりゃ、まぁ』
神様の血が入っていとはいえ、私の代々の先祖様はリィズを除いては人間だったんだし……
「これなら体を強化する身体魔法っていうのをちゃんと使わないとな。」
『身体魔法……?』
「例えばこの岩、普通に軽く殴ってみると」
ーバコンッ
いやいやいや普通に吹き飛びましたね。
「まぁこんな感じの威力しかないわけ」
いや、まぁ……はい
もう心の中で突っ込むのも疲れてきたので大人しく話を聴くことにする。
「で、ちょっと拳に魔力を込めてやると……」
ーガッ バンッッ
いや
え
もう岩とか原型なくしてただの砂となり風に攫われていく。
恐るべし身体魔法
「そうだな、姫さんは身体魔法の特性があまり見られないから精神魔法を使うといいかも。」
『精神魔法?』
「そう、姫さんの一番の得意分野だ。
身体魔法は直接体を強化しているけど、精神は言葉とか心の中で念じることによって相手を従えたりする。それは自分の身体にも有効にできるんだ。」
『へぇ……』
あぁでも
私はラミアから逃げる時に身体魔法で宙達に加勢したんだっけ。
あの時は確か……
『“私の言葉は魔法”』
ふわっとお腹が熱くなる。
『“私は誰よりも早い”』
短刀を手に持ちエリックに斬りかかった。
ーカキンッ
「うわっ」
私の剣を受け止めて彼は笑った。
「凄いや、目で追うのがやっとだった。
その調子だよ姫さん。」
『そう…』
「落ち込むなよ。まさか俺を殺そうとでも?」
『まさか』
挑発的に笑い肩を竦めてみせると彼はまた意地悪い顔になる。
「面白い」
ーカキンッ
「重さが足りないな」
仕返しだと言うように短剣をぶつけてくる。
それは重くて後ろに吹き飛ばされてしまった。
『うっ』
「もっともっと早く、動くことを意識するんだ。」
私は頷いて剣を持ち直す。
もっともっと強く
ーチャキッ
大きく地を蹴り彼に再び斬りかかった。

