ーコツコツコツ
ヒールの音が翠の神殿に響く。
夜になってもここは幻想的に淡い緑色に光っていてまるでフレンチさんの周りの空気のように澄み渡っている。
「何処に行っていたの?出ていくのが部屋から見えたんだ。」
宙が心配そうに私に駆け寄ってくる。
『少し夜の空気を吸いにね。』
「…気をつけた方がいいよ、もしアスタロッサ派と出会ったりしたら怖いから。」
『そうだね、不注意だったかな』
私は近くの岩に飛び乗って月に向かって手を伸ばした。
『夕紀達はどうしてるのかな。』
きっと酷い目に合っているに違いない。
牢屋に閉じ込められていた日のことを思い出して少し体が震えた。
あれがつい昨日のことなのだ。
しかも魔王の誕生日……
ただじゃ済まされない。
「俺達が助けに行くんだ。」
『……!』
「少し時間はかかるかもしれない、けどあいつらは絶対に待っていてくれる。」
ねぇ
宙
気付いてる?
初めて、仲間として接してくれたよね。
俺が助けに行く
じゃなくてさ
“俺達が”っていってくれて、本当に嬉しかった。
私が足でまといじゃないって、一緒に戦えるって認めてくれたんだよね。
その期待を裏切らないようにするから
だからもし戦いが終わったら……
『また一緒に、学校行こうね。』
「あぁ」
夕紀、レリアス、シェリー、ルリ、ミリーナさんすぐに助けに行くから。
日和も架も……すぐにまた会えるよね。
私は彼等の近くにあるだろう月に手をまた伸ばす。
今度は精一杯爪先を伸ばして。

