ーパンッ

『……』

「……」

「……」

何も出てこない

ただただ乾いた音が響き広い庭に反響するだけ。

まさかの展開にふたりもどう反応していいかわからないようだ。

「そっか、姫さんはこういう特殊武器を扱ったことないのか。」

『…はい』

「そんな落ち込まないでいいって!ほら、初めてのことが出来ないのは当たり前じゃん。」

じゃあさっきなんで固まってたの。

たぶん皆には最初からそういう才能があった。

いや…私にもあったはずなのだ。

その記憶の欠片を手に入れたら、私はどれだけ強くなれるのだろうか。

『エリック、少しずつでいい、教えてください。』

「もちろん付き合うよ。俺は教育係らしいからさ。」

私はもう少し簡単なただの鉄砲をイメージして放つ。

ーパンッ

『うわっ』

今度は銃の先端からなにかが光って私に魔法が発射される。

銃は私の手からするりと抜け、ふたりして地面に叩きつけられた。

『いっ……』

「んーもうちょっと優しく扱ってあげなきゃだめだな。」

『優しく……?』

「そう、ただの道具じゃなくて自分の体だと思って使わなきゃだめだ。魂を一体化できれば完璧だよ。」

魂を一体化……

魂ってそもそもどうこうできるものなの?

「あ、いや、魂を一体化させるのはちゃんと訓練しないと出来ないから焦らなくていいよ。その前にちゃんと制御することが先だからな。」

私は地面に転がった銃を抱きしめる。

この子とはふたりでひとつ

『よし、こんなところでへこたれてられないもんね。』

「美影…」

宙を振り向いてエリックは肩を叩く。

「お前はすることがあるだろ?」

「……」

「大丈夫、フレンチさんは少し偏見は持っている人だけど、本当にいいひとだよ。
俺が人を見定めるの間違えたことあったか?」

なんの話しをしているのか、少しわかる。

きっと宙は戸惑っているんだ。

今まで天使達は彼に酷い仕打ちをしたことがあるだろうから……。

「お前を信じるよ」

宙は少し笑ってその色違いの翼で空に舞った。

とても綺麗だ

誰がなんと言おうとも、彼は私の中では世界一格好良い救世主なのだから。

「さて、じゃあ姫さん……俺の訓練は厳しいよ?」

『ふふ、すぐにあなたを抜いてみせる。』

エリックは面白そうに笑って架とそっくりに笑った。

「望むところだ」

私達の間に、暖かい風が吹いた。