「んじゃー自然っていっても広すぎるから、とりあえずもう少し絞っていこうぜ。“自然”系統は風とかのほかにも重力とか、少し“魅了”に近い音の魔法とかもあるんだ。で、たとえば“身体”と“自然”を混ぜると…。」

エリックが思いっきり地面を殴るとそこから地面が抉り出され空に浮いた。

『……私は“身体”には向かないね。』

「そうだな、姫さんじゃ力でねじ伏せられちまうよ。だから武器は剣とかは向かないな。」

「っていったら何がいいの?槍も重いから多分だめだし……」

何もかもが定まらなさすぎてふたりを困らせてしまっている。

申し訳なくなっているとエリックは私の腕を引いた。

「ちょっとついてきてくれ!」

『え、あ、ちょ』

「エリック」

宙の真面目そうな声が聞こえてエリックは振り返った。

そして何秒か見つめ合うと、苦笑いしながら私の手を離す。

「わかったよ、そう怖い顔すんなって」

『宙?』

「あぁ、なんでもないよ」

宙は私の手を握ってそのままエリックを追いかける。

嫉妬してるの?

少し機嫌が悪そうな彼を見ていると胸がぎゅっとなる。

「ここ!」

エリックが急に立ち止まってこじんまりとした扉の前にたった。

誰もが通り過ぎてしまうような、そんな扉だ。

何かを唱えてからエリックは扉を開いてずんずんと中に進んでいく。

「どう?」

『……!』

言うなればそれは宝物庫

たくさんのキラキラしたものがそこにはあった。

「なにか参考になるといいなっておもってね。」

ふと思い出したように更にエリックが言葉を続ける。

「そういや、姫さんには使い魔はいないのか?」

……

エルごめん

長い間会っていなかったから忘れてしまっていた。

「いるよ、仮の使い魔の男の子と一匹ね。」

「え、あの人以外にもいたの?」

宙も目を大きく開いて驚いている。

「姫さんの使い魔か……特性は召喚系統にもあるみたいだね。精神に自然に召喚……なるほどね。姫さんの使い魔って凄そう。」

リーフは元大天使の堕天使

エルは自称最強の使い魔

うん…意味がわからないな。

「今召喚出来る?」

『え』

「いやそれは……」

神界を追放されたリーフを呼び出すのは流石にタブーだ。

というより彼を使い魔にしてよかったのだろうか。

「事情があるみたいだな。」

エリックは気にしていないのか適当に場所を探る。

「弓とか?いや、つまらないか」

「何を基準に決めてるんだよ。」

宙は呆れたようにしているがどことなく楽しそうだ。

「まぁでも姫さんってったら魔女、杖とか?
いや、でもそれもありふれてるなぁ」

でも私、護身用に剣は持っておきたいな。

ーガッ

『っ!』

私は何かに躓いて転ぶ。

「美影!?」

宙が慌ててきてくれるもののあまりのごちゃごちゃした足場にもたついている。

『いっつつ、なに?』

私は転ばされた主を見た。

現代世界でいうショットガン

それが地面に転がっている。

先端は鋭く刃のようになっていた。

「ふーん、銃か、でもよさそうだね。」

不思議だ

この銃は全体的にキラキラとしていて透明で、銃弾を入れるところがない。

「これは“精神”そして“創造”のちからが重要になってくる武器だよ。ちょっと外に出てみようか。」

先程の場所まで戻ってエリックの話を聴く。

「ここの引き金を引く時に、想像する。
どんな魔法を放出するのか。
この銃は本当に珍しい銃なんだ。
ただの銃ではなく、魔法を放出する道具だと思った方がいい。例えば炎は……」

エリックは少し空に浮かんで上に向かって引き金を引いた。

ーバンッ

乾いた破裂音がした瞬間、その先端から弾丸が出たかと思うとそれは近くにあった木を貫き燃やした。

『え』

「こんな感じ、それと他には“無”の物体変化」

再び銃を構えると撃つ

そこから弾丸が飛び出したかと思うとだんだん大きくなって地面に当たった瞬間酷く揺れる。

「うわ、この銃本当に凄いな。」

『そ、そうだね。』

おっかなくて気楽に撃ってられない。

気楽に撃つものでは無いが……

「じゃあなんでもいいから撃ってみてよ。」

私は拳銃を手にしてその軽さに驚く。

何を撃とうかと考えて、一呼吸置き引き金に手をかけた。