案内されたのは神殿敷地内にある広い石畳のある場所だった。

「さて、それでは実力を見せてもらいましょう。」

『……実力、ですか?』

もちろん魔法だろう

だが私は全然なんだ。

「……その様子では全然ですね。では武器は?」

『……』

「…話になりませんね。
兵を集めたいのでしたら、それ相応の貴方について行きたいと思える理由が必要です。
アスタロッサならカリスマ性、マーシュなら頭脳、エリーゼは力、私は……」

「人望ですかね。」

上の方から白橡色で短髪の似合う男の人が私達を見下ろしている。

いつの間に……?

「……エリック、何をしている?」

「まぁまぁ、隊長が歩いていくのを見たのでなんとなく来たんですよ。」

「他の隊員は訓練中だが?」

「お堅いですねー、もうちょっと肩の力を抜くのも大切ですよ?」

負けまいとエリックと呼ばれた私達より少し歳上くらいの男の人がにこにこと彼女の周りを飛んでいる。

「はぁ……まぁいい、いいところに来たな。
エリック副長、彼女の教育係をしてくれ。」

「……え」

「私は副長が抜け出した隊の訓練を見に行かなくてはならないからな。」

フレンチはしてやったりというように軽く笑ってその場から飛び去った。

「はぁ……やられたなぁ」

頭に手をやって私たちを振り返る。

宙は見知っているのか顔が明るくなった。

「エリック!」

「久しぶりだな!お前恋人いるなら教えろよ。」

そんな何気ない会話が怖くて思わず口走る。

『恋人じゃないわ』

「……振られたな」

「そうみたい」

もし彼に否定されたら、きっと傷つくから。

「んーじゃあ自己紹介俺はエリック、フレンチ隊の副長を務めています。只今から姫君の教育係になりました。よろしくお願いします。」

丁寧にお辞儀をして笑う

あぁ、なんだか少しだけ架に似ている。

でも違うのは、なんとなく胡散臭い。

『こちらこそ、その敬語はやめて欲しいな。宙の知り合いみたいだから私もそっちのほうが気が楽。』

「そうか、わかったよ姫さん」

その呼び方はどうにかならないのかと思っていると、彼は召喚魔法を使いだした。

「“九つの清き精霊よ、ここに”」

エリックが呼び出すと共に九つの光に包まれた精霊達がいっせいに飛び出した。

「彼等は精霊だよ。主に能力を見分ける手助けをしてくれるんだ。」

綺麗な光に包まれた精霊が私の頬に擦り寄ってくる。

なんとも可愛い

「魔法には大雑把に分けると八つの特性がある。
一の力 創造
二の力 自然(火や水などの自然要素)
三の力 身体(強化、獣化など)
四の力 魅了(幻術、歌、魔眼、操術など)
五の力 精神(読心術、言霊など)
六の力 召喚(または転送)
七の力 癒
八の力 無(無効化、消滅、空間など)
それを今から手本を示すから後でやってくれ。」

エリックは軽く光の玉を作って精霊達に見せた。

すると白い精霊がその玉を触る。

「俺の特性は創造、精霊の色によって能力を見分けてる。なんでもいいからとりあえず魔法さえ使えば精霊は教えてくれるよ。」

私は頷いて手の中で光を作りだした。

すると黄色い精霊とその後に緑の精霊が私の元へやってくる。

「やっぱりね」

『やっぱり?』

「五の力、“精神”が君の得意分野らしい。もうひとつは一番レギュラーな“自然”かな。あんまり精神系の特性を持つ天使はいないからなぁ…。
言霊って使えるのか?」

『…前は体が熱くなって命令すればよかったんだけど、どうやってやっていたのかわからない。でもできないのは、私の記憶が不安定だかららしいの。』

宙は少し眉を顰めた。

この記憶って、きっと彼に関係してるはず。

「そうか、じゃあとりあえず言霊はあきらめるしかねぇな。自分の魔法をつくんのって案外大変なんだよ。特性を知れただけ大きな進歩だな!それに、精神もあるけど一番自然がイメージしやすいしそっちを一旦伸ばすのもありだぜ。」

『すごいね、魔法って…。』

思ったよりも少し難しいけど、やっぱり奥深い。

面白そうだ