美しい空の世界
神殿のほうへ進むがわりと遠い。
とても大きいからか遠くから見ても距離が掴めなくなっていた。
実際、そこにたどり着いた瞬間、その大きさに圧倒される。
「勘違いしているようですがこれは神殿ではございません。ここは入口でございます。」
『入口……?』
宙と私は彼女がその入口と言われる建物の正面に立つのを見守る。
「よお、フレンチ、今日も仕事か?」
『ど、ドアが喋った!?』
そう、彼女が神殿の扉らしき場所に手を伸ばした瞬間、声が聞こえたのだ。
「さっきも通ったでしょ。全く…忘れん坊なのは変わらないわね。」
フレンチと呼ばれた天使は肩を竦めて私達を振り返った。
「彼はこのハリボテの神殿の門番、ゲート。
彼の許可がなければここはただのからっぽの建物だ。」
「よぅお嬢ちゃん!美人だね!ストロベリーブロンドの……ん?おいおいおいフレンチ、この嬢ちゃんまさかあの!?」
「あぁ、ってことで早く扉を開けてくれ。」
「はいよー」
ふたりの会話をぼんやりと聴いていると宙が私と目を合わせた。
「すごいよ」
『え?』
「ようこそ、天の都へ!!」
大きく左右の扉が開いた。
そこは建物ではなく、大きな都市のような、天使達が空を飛び交い小さなふわふわした可愛らしい生物や幻獣達が溢れている。
建物の中に大きな空が広がっていて、本当にそこは異空間だった。
「ゲートはこの世界に通じるただの門です。
ここは建物の中じゃなくて別の空間、天使達が集まる都なのです。」
じゃあさっきのゲートは本当にただのこの世界に通じる門だったのか。
振り返ってみるが扉は見当たらない。
白い建造物が立ち並んでいて、そこから天使達が行ったり来たり、きっとそこが家なのだろう。
「綺麗だよね」
『うん』
「じゃあ飛んでみよう!!」
『きゃ』
宙に抱えられて大きく上昇する。
『うわぁ!!』
広大な大地に立ち並ぶ白い建物
そして遠くの方には大きな神殿のようなものが見えた。
『あの四色の建物は何?』
神殿を守るように四色のこれまた大きな建物が並んでいる。
「あれは四大天使の住まう場所だよ。」
「はぁ、突然何処へ行くかと思えば…」
フレンチがやれやれといったように碧眼を細めてみせる。
綺麗な青緑の瞳は澄み渡っていて、強い意志を持っているように思えた。
「挨拶が遅れました。私、四大天使の翠の神殿の守護者フレンチと申します。」
宙も腰を折って彼女と向き合った。
四大天使
その響きで彼女が凄い人なんだとわかる。
言うなれば神直属の精鋭なのだろう。
「あの四つの真ん中にある神殿が、本殿です。
どの世界のどの神殿よりも広く美しい。」
フレンチさんは誇らしい様子でそれを見やる。
「さぁ、主の元へ案内しましょう。」
フレンチさんが大きく美しい翼を広げて飛んでいく。
私達もその後を景色を堪能しながらついて行った。