俺は、いつになってもこうだ。
ごつごつした自分の手を見て、あの小さなか弱い手を思い出す。
先程頬に触れた温もりがいつまでも離れない。
“さよなら”
彼女はそう言って姿を消した。
俺達の為に。
「くそっ」
石の壁を思いっきり殴るとそれは破壊され、そして手には血が滲む。
“好きだよ。”
頭の中でぐるぐると彼女の声が再生される。
君は残酷だ。
俺にするなと言ったのに、自分を犠牲にした。
「宙……」
夕紀が心配そうに俺の顔をみた。
その腕の中には、小さく息をする日和の妹がいる。
「彼女を届けよう。」
それが美影の一番の望みだ。
第一、今奴らを追いかけても何も出来ないに決まっている。
俺達は先程奴らがしたように、ベランダから飛び降りた。
ーガサッ
「まぁ、こうなるって思ってたよ。」
氷よりも冷たい目で、俺たちを見ているリーフとエル。
どうしようもなかった
なんてただの言い訳にしかならない。
「その子を届けてきなよ。僕が森でお前達を強くしてあげる。」
驚いた
まさかそんなことを彼が言うなんて思いもしなかった。
何が狙いなのかは全くわからない。
でも、強くなれるなら……
「「了解しました。」」
悪魔のような天使に従うしかなさそうだ。
天使を“喰らった”大罪人に……。