「あ!夕紀!美影!」
進んだ先になにやら見慣れたふたりが立っている。
日和と架だ。
架、本当に落ち着いたな。
「んーやっぱり、美影美人になったわぁ。」
日和が近所のおば様風に腕を組み頷いている。
そんな様子を横目でみながら架はコンビニ袋をチラつかせた。
「なぁ美影」
『?』
架は私に手招きして耳元で囁いた。
「あの店員となんかあった?」
『え?』
「ほら、あのツインテールの、ツリ目がちな同年っぽい……」
『いろいろね』
あの子の存在はもはや、バイト内でもほとんどの人が敬遠しているくらいだ。
愚痴愚痴言うのは趣味ではないが
彼女が来てから本当に、バイトが辛い。
いや、違う?
今までは何に関してもなんにも思わなかったから、気付かなかっただけなのかも。
『はっきりしないのはもう嫌だから。その子と今日は一騎打ちでもしようかなって。』
「…無理すんなよ?」
架はそう言って私の頭をぽんぽんと軽く撫でた。
「あー!!」
突然日和が叫んで私の顔を見る。
一体なんだ、その表情は。
「最悪ー、あれ買うの忘れちゃった。」
「あれってなんだ?」
「……女の子なんだから私達!じゃあまたね!」
『えっ』
日和のその言葉にようやく気付いたのか架は顔を抑えている。
『……日和、架と一緒じゃなくてよかったの?』
「いや私こそごめんね!夕紀とおバイトデートしてたのに。」
『デートって…日和、買い忘れたんじゃないんでしょ?』
「んー、バレちゃった?」
日和はどんよりとした曇り空すら晴れそうな笑顔を向けた。
あぁ、本当に……
日和
架
夕紀
今日だけでも、こんなに助けられている。
「ちょっとさ、野生の勘ってやつ?いや、女の勘かな…なんか、良くないことが起こりそうな…。」
日和は頭をぐるぐると掻きながらコンビニの自動ドアの前に立った。
「いらっしゃいませー…あ、逢沢ちゃんおはよう。」
『おはようございます。』
「あっおばさん、また来ちゃいました。」
「あらあら、美影ちゃんと知り合いだったなんてねぇ。」
店に入ると正社員の後藤さんが朗らかな表情で迎えてくれる。
このコンビニの聖母とさえ呼ばれるほど気のいいおば様だ。
『知り合いなんですか?』
「いいえーさっき初めて出会ったのよ。」
さっき初めて…?
そうとは思えないほど打ち解けているふたり。
日和のコミュニケーション力の高さはもはや尊敬に値する。
ーテレレレレン テレレレレン
コンビニのドアが開く音がして振り返ると理江ちゃんが立っている。
「おはようございます」
『おはよう』
理江ちゃんの口角が上がった。
でも目は笑っていなくて、寒気がした。

