「サキちゃんはこの仕事長いの?」
「そうですね、今年で4年目になります。このお店ではまだ1年くらいですけど」
グラスの水滴をハンカチで拭きながら、橘さんを横目でちらりと伺い見た。
ドリンクもどんどん飲ませてくれるし、何より遊び方がキレイだ。大して気に入られるようなことは出来ていない気がするけれど、店長の思惑通り延長もしてくれた。しかも場内まで。
今日の売り上げ、けっこうイイ感じかも。
カクテルを飲みつつ心の中でガッツポーズをしていると、橘さんは私に意味深な笑みを見せた。けっこう飲んでいる筈なのに、彼の顔色は一向に変わらない。
「せっかくだから今日出会えた記念に、シャンパンでも入れようか」
「わあ、本当ですか? 嬉しい。ありがとうございます」
ここまでくると流石に楽しくなってきた。普段あまりにお金を使いすぎるような客はやんわりと止めるけど、この人なら良いかな、なんて酔いの回った頭で考える。

