「サキちゃん、前から山下さんと話してみたいって言ってたもんね」


 ミキさんがグラスを掲げながらからかうように笑うけど、言ってない。自分が飲みたくないからって、適当な女の子をドリンクで呼ぶのは勘弁してほしい。


「ほんと? 嬉しいなあ」

「ふふ、そうなんです。一度お話してみたくって。だから今すごくドキドキしちゃってて」


 適当に話を合わせるけれど、ボロが出ないかヒヤヒヤする。ミキさんを怒らせると後が面倒なのだ。


「頂きます」


 山下さんと乾杯をして、お酒で火照った身体に日本酒を流し込む。お酒に弱い方ではないけれど、日本酒だけはどうも苦手だ。


 ぐらぐらと脳が揺れるのを感じながら、気合いで一気に飲み干した。いいねえ、と山下さんが嬉しそうに声をあげる。その隣で、ミキさんが満足そうに笑っていた。