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 アフターで連れていかれたのは、お洒落な隠れ家のようなバーだった。正直もうこれ以上飲みたくないけど、ウーロン茶なんて頼める雰囲気でもなくて、仕方なく適当なカクテルを頼む。


 伊藤さんの席でも橘さんの席でもたくさん飲ませてもらったし、最後はシャンパンもしっかり飲んで、流石に今日は飲みすぎた。頭がぐらぐらする。


 橘さんは引っ張りたいけど、今は早く帰って布団に潜り込みたくて仕方がない。もともとアフターは嫌いだし、適当に切り上げて帰ろう。

 そう思っていた、のに。




「――サキちゃん。愛人になる気はない?」


 何の前触れもなくそう言い放った橘さんに、私の酔いは完全にさめた。


 アイジン、――愛人。


「……どうして、私?」


 愛人という言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡って、ようやく唇から滑り出たのはそんな言葉だった。

 けれど、その疑問は本心だ。残念ながら、私は橘さんに特別気に入られることをした覚えはない。まして愛人として求められる理由なんて見当がつかない。