少し残業をして駅までの道を歩く……


 お腹すいた…… 
 夕食、何か買ってちゃおうかな?


「矢崎!」

 後ろからの声に振り向く。


「課長…… お疲れ様です……」


「なあ…… ラーメン食って行かなねぇ?」

 課長の言葉に、つい口元が緩んでしまう……


 課長は私の返事も聞かずに、ラーメン店のドアを開けた。

 又、とんこつと餃子の匂に負けてしまった……


 生ビールを一口飲めば……

「美味しい……」

 ため息とともに、言葉が漏れてしまう。

 課長は、ふっと笑う……


「矢崎…… 今日はありがとうなぁ……」


「えっ。何が、ですか?」

 私は驚いて課長を見た。


「現場でのアシスタント…… 助かった……」


「いえ、当たり前の事ですから……」


 私は、ラーメンをすする……


「そうでも無いんだよ……」


「えっ?」

 私は課長を見たが……


「いや……」


 課長は、軽くため息をつき、ビールを口に運んだ。


「なぁ、矢崎…… お前の観察力から見て、俺はどう見える?」


 一瞬どう答えていいか分からず、ためらってしまったが……


「うーん。以外に意地悪……」

 私は、課長に流し目を送った。


「なんだよ、 それ……」

 課長はふて腐れた顔で睨んだ。


「でも……」


「でも?」


「いいえ」

 私は首を横に振った。


 

 でも…… 人から好かれる人です。

 でも…… かっこいいです。

 でも…… 優しい人です。


 でも…… でも…… 

 もっと、もっと課長を知ってしまったら……