俺はオフィスに戻るが矢崎の事が気になって仕方ない。

 矢崎の仕事の終わるのを待っていた。


「矢崎!」

 俺は、帰り支度を始めた矢崎に声を掛けた。


「はい」


「仕事は終わったか?」


「はい、お先に失礼します」

 矢崎は俺から避けるように、オフィスを出ようとした。


「お前…… 小山ってやつと付き合っているって本当なのか?」

 俺の口は勝手に動き出してしまった。


「……」

 矢崎は黙っていて答えない。


「お前…… 幸せなのか? 俺が言う事でも無いのかもしれないが…… あいつはやめといた方がいい……」

 
 矢崎の目から、涙がポタポタと落ちだした……


 なぜ泣くんだ?
 
「どうして?」

 見上げる矢崎の目は涙で潤んでいて、俺の胸を締め付けた。


「お前が心配だから…… お前なら、もっとふさわしい男がいるだろう? それに、俺の事も最近避けているみたいだし……」

 俺は何を言っているんだ、そんな事を言いたい訳じゃないのに……

 きちんと話をしうようと、矢崎の元へと歩みよったのだが……


「ほっといてよ…… 誰も私の事なんか見てくれないわ…… もっとふさわしいって? もう少しだったのに……」


 矢崎は、泣きながら俺を避けて、走り去ってしまった。


「もう少しってなんだよ! おい! 待て!」

 でも、俺は矢崎を止める事が出来なかった。


 多分、亜由美との事がひっかかっていたからだろう……


 もう少しってどう言う事だ……


 やはり、亜由美とはケジメを付けなければ……