俺と矢崎に何かが遭った訳でないのに、何故か避けてしまう……


 どちらかと言うと、矢崎を見る事が辛い……


 マンションの現場へもお互い別々に行く事が多くなっていた。

「野川課長。お疲れ様です」

 現場代人の佐藤のいつもと変わらない打ち合わせが進む。


 段取りの確認が済み、鞄に手を掛けると……


「野川課長、最近、矢崎さんと一緒じゃないんですね……」

 佐藤の言葉に一瞬手が止まる。


「ええ…… お互い、やらなければいけない仕事があるので……」


「そうですよね…… でも、今日も午前中、矢崎さん来ていたし…… 僕、課長と矢崎さんのコンビ好きだったんですけどね」

「えっ?」

「二人とも、お互いの行動を良く読んでいて、無駄が無いっていうか……」


「そうですか? 矢崎は、誰に対しても先を読む事が出来る奴ですから……」

「そうなんですけど…… 課長とはちょっと違った気がするな…… 今までで見たこともないくらい気が合っているっていうか…… 二人の企画をこれからも、楽しみにしているんだけどな……」


「ありがとうございます」

 俺は、佐藤のささいな一言に少し嬉しい気分になり、自分でも呆れた。


「でも…… 気になる事が……」

 佐藤の顔が急に曇った。

「なんですか?」

 俺は気になり、佐藤の顔を伺った。


「矢崎さん、うちの現場の若い職人と付き合っているって噂なんですけど、そいつがどうしようも無い奴で、今日もサボってパチンコだな…… なんで矢崎さん、あんな奴と付き合っているんだろう? なんかあったのかな?」


「えっ! どういう事ですか?」

 俺は思わず声を上げてしまった。


「僕が言うのもなんだけど…… 矢崎さん、あいつと居たらダメになっちまう…… 助けてやってよ」

 佐藤は、俺の肩を意味あり気に強く叩いた。


「あ…… はい……」


 どういう事んなんだ? 


 矢崎は優しい彼氏と幸せなんじゃないのか?


 仕事サボってパチンコしている奴なんて、何をやっているんだ、矢崎は……