セドリックとライアンが城下町の視察に出向いていた頃、週に一度の休みに当たったアデルは、母のご機嫌伺いの為、いつも通り屋敷に戻っていた。
挨拶もそこそこに、アデルは『ドレスを着せてほしい』と頼み、母を驚かせた。
アデルがそんなお願いを母にしたのは、十七年生きてきてこれが生まれて初めてだ。
大喜びでドレスを用意し、髪のセットも化粧も自ら施してくれた母に、アデルはほんの少し後ろめたい気分だった。
(この格好でセディに会うのは、『私』を諦めてもらう為)
後ほんの一ヵ月で、セドリックのお妃選びの宴が催されることは、もちろんアデルも父やライアンから聞いて、知っていた。
ここ数日セドリックが塞ぎがちなのも、そのせいだとわかっている。
だからこそ、ライアンに命じられたセドリックとの『逢瀬』も、そうすることが自分の責任だと思うようになっていた。
(私は王国を守る騎士になりたいから、セディのお妃様にはなれない)
自分にそう言い聞かせながら、アデルは大きな姿見の中で姫君の姿に創り上げられる自分を、複雑な思いで見つめていた。
アデルが屋敷から馬車に乗り込んだ時、西の空にはまだ、大きく美しい夕日が浮かんでいた。
セドリックの誕生パーティーから実に一月以上が経過して、あの時よりもだいぶ日が伸びた。
挨拶もそこそこに、アデルは『ドレスを着せてほしい』と頼み、母を驚かせた。
アデルがそんなお願いを母にしたのは、十七年生きてきてこれが生まれて初めてだ。
大喜びでドレスを用意し、髪のセットも化粧も自ら施してくれた母に、アデルはほんの少し後ろめたい気分だった。
(この格好でセディに会うのは、『私』を諦めてもらう為)
後ほんの一ヵ月で、セドリックのお妃選びの宴が催されることは、もちろんアデルも父やライアンから聞いて、知っていた。
ここ数日セドリックが塞ぎがちなのも、そのせいだとわかっている。
だからこそ、ライアンに命じられたセドリックとの『逢瀬』も、そうすることが自分の責任だと思うようになっていた。
(私は王国を守る騎士になりたいから、セディのお妃様にはなれない)
自分にそう言い聞かせながら、アデルは大きな姿見の中で姫君の姿に創り上げられる自分を、複雑な思いで見つめていた。
アデルが屋敷から馬車に乗り込んだ時、西の空にはまだ、大きく美しい夕日が浮かんでいた。
セドリックの誕生パーティーから実に一月以上が経過して、あの時よりもだいぶ日が伸びた。
