碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

セドリックは思わず足を止めて、訝しい気持ちでライアンの方に向き直る。
彼はセドリックに、口角を上げて更に声を小さくして告げた。


「面白そうな仮面舞踏会の情報を手に入れたんだ」


ライアンの言葉に、セドリックはきょとんとした顔で何度も瞬きをした。


こういう『気晴らし』は、いつもたいてい王太子であるセドリックの方から誘っていた。
もちろんお忍びの行動だから、親友のライアンでなければ連れ出せない。
こういうことには割と奥手のライアンは、いつも渋々付き添ってくれた。
しかし帰る頃は、セドリックよりもご満悦というのがいつものパターンだった。


ライアンの方からそんな誘いをしてきたのは、やはりこの間の晩の出来事のせいだろう。
改めて申し訳ないと思う一方、ライアンの気遣いが素直に嬉しかった。
それでも、セドリックは目を伏せる。


「……悪いけど、そういう気分じゃないんだ」


ライアンの言う『仮面』という言葉に引っかかりを感じながら、セドリックは止めたままだった歩を再び進め始めた。


一ヵ月も経たないうちに、またお妃選びのパーティーが開催される。
その時はセドリックも、より厳選された姫君たちの中から、妃を選ばなければならないのだ。