碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

彼の前で我を忘れて、乱暴な行為に及んでしまってから数日経った。
謝罪はしたし、その後ライアンもそのことに触れることはなかったが、セドリックの方にはまだ少し気まずさが残っていた。


パーティーの後からずっと、あの姫君はライアンの知り合いじゃないのかと疑っていて、たまに彼を揺さぶっていたが、ライアンの反応はいつも同じだった。
セドリックがこれだけ聞いても言わないのだから、本当に知らないか、それとも何かワケありか……。


そう考えて、彼から聞き出すことは諦めていたのに、あの晩セドリックは取り乱してしまった。
もうあの『仮面の姫君』を追うわけにはいかない、と思い知ったすぐ後だったのに、セドリックはライアンに問い詰めてしまった。
ライアンに申し訳ないことをした、という思い以上に、セドリックは自分を恥じていた。


だから今もセドリックは、ライアンから顔を背けるように、人が群がる店先を、背伸びしてひょいと覗き込んだ。
そんな彼に、ライアンはコソッと耳打ちする。


「今夜、久々に気晴らしに出かけないか?」


辺りを憚るような低くひそめた声に、セドリックはわずかに眉を寄せた。


「え?」