セドリックがライアンからその誘いを受けたのは、騎士団を引き連れ、城下町の視察に訪れた時だった。
国民の台所とも言えるフレイア王国最大の城下町市場は、今日も賑やかに華やいでいて、店先に並ぶ色鮮やかな野菜や果物はどれも瑞々しくて美味しそうだ。
眺めるセドリックの表情も、人々につられて和らぎ、明るくなる。
セドリックはここに来るといつも、馬から降りてゆっくりと散策することにしている。
王太子の視察で騒ぎになるのも困るから、彼は城下町を回る時はいつも騎士団の制服を身に着けている。
市場に買い物に来る庶民たちの間ではこの格好でも目立ってしまうが、城下町の巡回は、騎士団の毎日の日課だ。
目立ちはしても珍しい姿ではない。
果物屋の気さくな店主から、『味見に』とつやつやのオレンジをもらったセドリックは、その甘酸っぱい果肉を豪快に齧りながらのんびり人混みを縫って歩いていた。
そんな彼に、少し遠巻きに護衛していたライアンが近付いて来る。
「セディ」
昔からの愛称でコソッと呼ばれ、セドリックは目線だけでライアンに応える。
「何? ライアンも食べたい?」
セドリックは素っ気なくそれだけ聞くと、すぐにフイッとライアンから目を逸らした。
国民の台所とも言えるフレイア王国最大の城下町市場は、今日も賑やかに華やいでいて、店先に並ぶ色鮮やかな野菜や果物はどれも瑞々しくて美味しそうだ。
眺めるセドリックの表情も、人々につられて和らぎ、明るくなる。
セドリックはここに来るといつも、馬から降りてゆっくりと散策することにしている。
王太子の視察で騒ぎになるのも困るから、彼は城下町を回る時はいつも騎士団の制服を身に着けている。
市場に買い物に来る庶民たちの間ではこの格好でも目立ってしまうが、城下町の巡回は、騎士団の毎日の日課だ。
目立ちはしても珍しい姿ではない。
果物屋の気さくな店主から、『味見に』とつやつやのオレンジをもらったセドリックは、その甘酸っぱい果肉を豪快に齧りながらのんびり人混みを縫って歩いていた。
そんな彼に、少し遠巻きに護衛していたライアンが近付いて来る。
「セディ」
昔からの愛称でコソッと呼ばれ、セドリックは目線だけでライアンに応える。
「何? ライアンも食べたい?」
セドリックは素っ気なくそれだけ聞くと、すぐにフイッとライアンから目を逸らした。
