碧眼の王太子は騎士団長の娘に恋い焦がれる

そう考えて、ライアンはアデルに仮面を着けさせた自分は正しかったと考え直していた。
そして、つい先ほどのセドリックの荒れよう。
そこには本気しか感じられなかったから、ライアンはそれをアデル自身に感じ取ってもらいたかった。
その為にはどうするか――。


心を強いることはできない。
それでも、アデルの兄として、セドリックの親友として。
そして王国の繁栄に尽力する騎士として、とにかくもう一度セドリックにドレスを着たアデルを引き会わせるのが自分の使命だと、ライアンは信じて疑わなかった。


「アデル」


声の力を和らげ、ライアンは妹の名を呼んだ。
アデルはまだ納得いかなそうに、涙目で睨んでくる。
しかし、ライアンは彼女に優しく微笑みかけた。


「アデルだと名を名乗らなくてもいい。この間と同じように、仮面で顔を隠し、身元は明かさない……それでいい。俺は、お前を王太子妃として差し出そうとしてるんじゃない」

「……え?」


ライアンの言葉に、アデルは鼻を啜りながら訝し気に眉を寄せた。


「きっとセディは、お前を見つけたらこの間よりも熱烈に求婚してくるだろう」


そう言いながら、ライアンもそこには一抹の不安を感じる。


熱烈どころじゃない。
先ほどの激情に荒れるセドリックを、目の当たりにしたライアンからすれば、むしろアデルの身が危険なのでは?とも思う。